家づくりの参考はカフェのくつろぎと機能性
第一子の誕生と同時に、Sさんの網走市への異動が決定。「急に暮らしが慌ただしくなり、落ち着いた生活ができるマイホームがほしくなりました。年齢が30代半ばになり、いろんな意味で建てるなら今だと思いました」。そう語る奥さんは早速、土地探しを開始。さらに、住宅展示場や見学会にも出かけ、家づくりの最前線を研究しました。「いろいろな会社の建物を見て、良いところを参考にしたいと思いました。全体の印象としては大手ハウスメーカーよりも地域の工務店のほうが建て主の希望を汲み取った家づくりをしているように映り、安心しました」。
奥さんがそう話すのには、訳がありました。実はお兄さんが高杉工務店で棟梁を務めており、以前から「兄にマイホームを建ててもらう」のが奥さんの夢だったそう。「土地探しは難航しましたが、ようやく恵庭市で希望にかなう土地が購入でき、2017年秋に高杉工務店に新築の依頼をしました」。ご夫妻が思い描いていたマイホームは、街角のカフェのようなおしゃれな建物。その思いを代表の髙杉寿士さんがしっかりと受け止め、いよいよSさん宅のプランづくりが始まりました。
強さとデザイン性を追求した2×6工法の家
おしゃれな空間とともに、ご夫妻の要望は多岐にわたりました。共働きの奥さんは、家事や炊事がしやすいキッチンと水まわり、大容量の収納も希望。さらに、学生時代から剣道を続けているSさんはトレーニングルームを備えた趣味の部屋がほしかったそう。「2階には通常よりも多い部屋数をつくることになりました。そこで、耐久性に富んだ2×6工法を基本としながら、スキップフロアで個室をつなぐプランを提案しました」と、髙杉さんは語ります。
さらに、カフェのような居心地の良さを実現するため、リビングには吹き抜けを設け、庭に面して天地いっぱいに大開口を配置。床暖房を採用したフロアには熱に強いナラ3層フローリング、アカマツの造作、タモの階段など木の質感を生かした内装を提案しました。「壁で建物を支える工法なので、開口の大きさや位置、数には制限があります。今回は耐久性とデザイン性の両立を目指し、構造設計家であり、同じアース21会員でもある松倉建築設計の松倉さんの力も借りて、Sさんの要望をカタチにしました」と、髙杉さんは胸を張ります。ご夫妻は、そうした真摯な姿勢に「安心して、家づくりをお任せできた」と言います。
柔軟な現場対応でより美しく、暮らしやすく
2018年春、いよいよ工事が始まりました。完成を待ちきれない奥さんは、週に一度は現場に足を運んでいたといいます。「リビングの床材がそのまま壁や天井にも連続して張られていたり、玄関ホールに端材を使った棚が付けられていたり、行くたびに様子が次々と変わるのが楽しくて、嬉しくて」と奥さんは当時を振り返って語ります。
そして9月、建築中も髙杉さんと棟梁があ・うんの呼吸でブラッシュアップを続けた新居が完成。「ちょうど台風の最中の引き渡しで、翌日の引っ越しは北海道胆振東部地震の直後でした」。地震の揺れは大きかったものの、建物にその痕跡は残らず、新居の耐震性の確かさを証明することにもなりました。
6mの吹き抜けと大開口を設けたリビングは、頭上に繊細なルーバー状の手すりが張り巡らされ、モダンな佇まい。「イメージしていた以上の家になりました」と、奥さんも大喜びです。単身赴任中のSさんも、念願のトレーニングルームを実現し、大満足の様子。「どこもゆったりしていて気持ちがいいですね。早く単身赴任生活を卒業したくなりました」と、笑顔で話してくれました。