「てまひまくらし」のコンセプトモデル
田園地帯が広がる南幌町に、北海道の地域工務店と建築家が、クオリティ・ファーストを掲げ創り上げたモデルハウスが並ぶ「みどり野きた住まいるヴィレッジ」がオープンしました。その中で、武部建設は設計事務所のアトリエmomoとコラボレーションし、「てまひまくらし」をコンセプトにしたモデルハウスをつくり上げました。「アトリエmomoの櫻井さんと共に、この土地に暮らすことを考えた時に浮かんだのは、てまひまをかけて営む暮らし。手間をかけることが面倒ではなく、暮らす人の楽しみになるような家を創りたいと考えました」と武部豊樹代表は語ります。
完成したのは、天井や柱、梁など道産カラマツの構造材や古材を現しにした、武部建設らしいダイナミックな軸組の内部構造に、櫻井さんの遊び心が効いたデザインを組み合わせた、木の質感が心地よい家です。
構造はシンプルに意匠は魅力的に
「一見、ちょっと変わった家に見えますが、実は構造自体は4間×4間の昔ながらの木造民家のシンプルでコンパクトな造り。これなら木材の歩留まりもよく合理的でコストも抑えられます。性能や使い勝手、素材感や機能性などのクオリティは落とさずに、デザイン性をプラスした上で、価格も手の届く範囲にしました。これがうちが今後提案する北方型住宅の新しいスタンダードモデルの一つです」と武部さん。
内部構成はその言葉どおりシンプル。1階は玄関土間を除けば、正方形の中に水まわりやLDKが配置され、機能的にまとめられています。2階は寝室以外は仕切りのないワンフロア構造で、家族構成の変化や目的に応じて自由に変えられる汎用性の高いスペースです。
ともすれば味気ない空間になってしまいそうですが、現しにした柱や梁の木の風合い、青のアクセントカラー、コンクリートブロックや障子戸、無垢材などの質感が、ひと味違った存在感で空間をうまく演出しています。
まちづくりを見据えた汎用性の高い住宅
この地域プロジェクトが始まるずっと前から、街並みも視野に入れた家づくりを実践している武部建設にとって、自社だけでなく建築家や行政、他の工務店をも巻き込んだ一大プロジェクトは、長年描き続けてきた「武部建設の考える家づくり、まちづくり」実現への大きな第一歩となりました。その歩みを止めることなく、もう一つのコンセプトモデルハウス「TKBストリートモデル」も完成。「1世代1住居」から、100年住み継がれる家づくりへと前進しています。
「家は、買いやすい庶民の価格帯であること、高性能でコンパクトであること、少なくとも100年は暮らせること、シンプルで美しくかつ豊かなインテリアであること。ハイクオリティ&ハイコストパフォーマンスで、なおかつ住み手が変わっても使いやすい汎用性が高い家が、これからのスタンダードになっていくと考えています」と武部さんは話します。
クオリティを保ち続けるために特に力を入れているのが、自社大工の育成。維持管理がしやすく、耐久性の高い軸組構造の木造建築を支える高い技術とノウハウの継承は、地域工務店の責務だと言います。古民家再生を通じて伝統建築の技や構造を学び、大工には技能士の国家資格取得を推奨、待遇やキャリアプランも含めた大工の地位向上などにも力を入れています。「自社大工こそ工務店の力の源」そう言い切る武部さん。モデルハウスを訪れると、地域の気候風土を知り尽くした地域工務店だからこそできる、これからの武部建設の家づくりを、しっかりと感じることができるでしょう。